妖怪アンテナ____

世界観

まるで其れを忘れぬようにと、四季折々にこれまで織り成してきた歴史の香りが漂う、和国日本。 

神を祀り、そして神と自らを繋ぐため、季節が変われば彼らは祭り事を催す。

 古風ともいえるこの国の技術の水準は、しかし近代のものに共通しているが、唯一、今日の日本とは異なる要素が存在する。

 ──それは、八百万の神々と対極の存在となる“妖怪”が住みついている、ということだ。 

周知の通り、妖怪は人間に悪戯をしたり、或いは悪てんごうを働いたりするもの。

然れど初めのうちこそは、共存関係を築くことができていた。

 しかし、二百年前に起きたある事件で、互いを隔てる壁は、より堅牢なものとなる。

 妖怪から和国を守った陰陽師、安倍晴明は、結界の役目である『祠』と、貴族たちの家宝として五つの宝を国に託した。

 それから暫くは、古今変わらず、熱意と絶え間ない尽力で街を守護する『町奉行』、それから嘗ての時代の英雄たる陰陽師が、人々を妖怪の脅威の前へ晒さぬよう姿形を変えた『怪退屋』二つの組織によって、この国は守られ続けている──と、そう容易く安寧の時を維持することは叶うまい。 

 祠を参拝する者が減った今、国の結界は弱まりつつあった。

 それは、妖怪が人里と交わる事を意味する。

 無念、怨恨の類を底無しの壺へと溜め込んだ妖怪。

 信仰心の弱まった人々。

崩された平穏によりて築かれた拒絶の壁を打ち砕くのは、互いを拒む鋭利な意志によるものか、あるいはそれ以外の、温かな何かだろうか。


 それを知り得る者は今はなく、結末はただ、和国日本を生きる彼らに委ねられた。